太極拳の套路とは?名称・意味や覚え方まで解説
太極拳の練習方法の一つに套路(とうろ)練習があります。
空手の型などとおなじように一人で練習するものが套路です。
覚えるには多少の時間が必要ですが、いちど身についてしまえば忘れる方が難しいでしょう。
毎日少しでも套路を練習すると、徐々に体力がついて、気の流れが良くなります。
気の流れが良くなれば、氣≒血なので、簡単な動きにもかかわらず、とても血行が良くなって体が温まるでしょう。
美容や健康にもとても良いのが太極拳です。
毎日少しずつ練習して行けば套路を覚える事が出来るので、諦めずに練習を続けていきましょう!
目次
太極拳とは
太極拳は中国の伝統的な武術であり、健康法であり、競技スポーツです。
太極拳は健康を維持し、不法な者から村を護り、幸せな人生を全うするための武術として中国で生まれました。
武術として生まれたので、太極拳には力が弱い者が強い者を制圧できる技や、様々な武器術なども伝わっています。
気功や医術も取り入れたので、太極拳は気功法として美容や健康にとても良い運動です。
立禅と言われることもある太極拳は、禅に通じる日本の武道と同じく瞑想や気功を意識して行うことで、「自然に溶け込んで宇宙と一体になるような感覚」が養われます。
太極拳では基礎練習をするだけでも体が温まって血流が良くなるのを感じられ、とても健康に良いと実感できるでしょう。
太極拳は競技スポーツとしても発展していて、地方大会や全国大会の他に、世界大会も行われています。
太極拳は中国の伝統的な武術であり、健康法であり、競技スポーツです。
太極拳の基本
太極拳の基本は放松(ほうしょう/ファンソン=ゆるむこと)と纏絲(てんし=らせんの動き)です。
他の中国武術や気功法でも行いますが、太極拳の基本練習として站椿功(たんとうこう=同じ姿勢で立つ練習)をします。
その時に出来るだけ力まないように体をゆるめるように練習すると、太極拳の基本が体に染み込んで行くでしょう。
体がゆるまないと素早く動けないし、自分よりも強い大きな力に対応できません。
体がゆるんでいないと血流が滞って健康効果が期待できなくなってしまいます。
らせんの動きは太極拳の基本であり本質です。
らせんの動きは初めに学びますが、「らせんの動き=太極拳」と言ってもよいと私は思います。
小さな力を大きくし、大きな力を小さくするなど、らせんの動きは身を護るために欠かせません。
また、捻る動作はとても血流がよくなるので、らせんの動きは健康効果も高いでしょう。
太極拳の基本は放松(ほうしょう/ファンソン=ゆるむこと)と纏絲(てんし=らせんの動き)です。
太極拳の歴史
太極拳は中国の明の後期から清の始まる頃に、自分の体と村を護る目的で、武術として生まれました。
中国の河南省(かなんしょう)温県(おんけん)に有る陳家溝(ちんかこう)という村の陳一族に伝承されてきた、1650年ごろに創始された武術が太極拳の起源です。
陳氏太極拳と名乗るようになったのは、都会の北京で「太極拳」と言う名前で陳一族の武術が広まった後と言われています。
陳氏太極拳は、内家拳法や他の民間武術や日本の陰流剣術の影響を受けて戚継光(せきけいこう)が書いた紀效新書(きこうしんしょ)をベースに、陳王廷(ちんおうてい)が軍の武術や医術なども取り入れ、より実用的に改良して創りました。
1800年代に楊式太極拳を創始した楊露禅(ようろぜん)が陳長興(ちんちょうこう)から陳一族の武術を学び、都会の北京で教えたため、今では世界中に太極拳の愛好者がいます。
太極拳は中国の明の後期から清の始まる頃に、自分の体と村を護る目的で、武術として生まれました。
太極拳の套路の基本
套路(とうろ)とは、型を繰り返す太極拳の練習方法のことです。
一人で行える練習なので健康増進や動作の確認として日々行えます。
代表的な動作は以下の動画をご覧ください。
進歩(しんぽ)では、両手で纏絲(てんし)をしながら一歩ずつ前進します。
退歩(たいほ)では、大きく捋(りー)をしながら下がります。
左顧右眄では雲手(うんしゅ)をしながら左右に移動します。
太極拳の套路の基本で重要なのは歩法です。
手や腕の動きは指導者の動きが見やすく、まねやすいですし、定歩(ていほ=足を動かさない)で練習することも出来ます。
歩法はバランスを取りながら体重移動をしなければいけないので、手や腕の動きよりも習得するまでに時間がかかるでしょう。
第二の心臓とも言われるふくらはぎを動かせば、とても血流が良くなります。
まずは歩法だけを練習して、習得していくと良いでしょう。
前に進むのが進歩(しんぽ)で、地面に踵から着地します。
後ろにさがるのが退歩(たいほ)で、こちらも踵で着地するようにしましょう。
左右に移動するのが左顧右眄(さこうべん)で、股下を開いて移動する時は踵で着地し、足が交叉する時は爪先から着地します。
歩法だけでも血流が良くなって氣の巡りも良くなり体がとても温まるでしょう。
慣れてきたら手の動きも加えて練習してください。
太極拳の套路の基本で重要なのは歩法です。
太極拳の套路の意味
太極拳の套路には、様々な意味が含まれています。
まず一つ目に武術の立ち方や歩き方の練習としての意味があるでしょう。
また武術としての攻撃や防御の仕方の練習の意味も有ります。
そして動作と呼吸を合わせた気功法の練習の意味も含まれているでしょう。
それぞれ解説して行きます。
立ち方歩き方
太極拳の套路には武術としての立ち方や歩き方の練習の意味があります。
背筋を真っ直ぐにしてお尻の出っ張りを収納して、胸椎から頭頂までが上に引かれ、腰椎から尾てい骨が地面の奥に引かれているようにイメージしてください。
太極拳は踵に体重を乗せ、移動する時も踵で着地するのが基本です。
突いたり押したりする時も踵で地面を蹴るようにして、地面からの力を相手に伝えると大きな力が伝わるでしょう。
正しく立って、正しく移動する事ができると、人体の構造的な強さを保つことが出来るようになります。
また、正しい姿勢が出来ると気の流れがとても良くなり、武術的な強さも健康的な体の強さも肌の強さも手に入れる事が出来るでしょう。
攻撃防御
太極拳の套路には武術としての攻撃や防御の仕方の練習の意味があります。
套路の練習は、纏絲(てんし)と言うらせんの動きを身につける練習です。
らせんの動きには、相手の強い力を小さくする作用があります。
また、自分の力を出来るだけ増幅するためにらせんの動きを使う事も出来るでしょう。
らせんの動きには、相手の攻撃をそらして、更に相手のバランスを崩す作用もあります。
太極拳ではらせんの動きを身につける事がなによりも重要です。
身を護る技術には、らせんの動きが無くてはなりません。
らせんの技術を体に染み込ませるために、たくさん套路を練習してください。
気功法
太極拳の套路には気功法の練習としての意味があります。
呼吸と動作を合わせて套路の練習をしていると、とても血流が良くなって体が温まるのを感じられるでしょう。
血≒氣と言われます。
套路の練習を続けていると氣の流れを感じられるようになっていくでしょう。
血や氣が滞りなく、全身のすみずみまで届くと、病気に負けない強い体になります。
また、肌艶が良くなって健康的で綺麗な肌になって行くのを感じられるでしょう。
套路の効果を実感した時に、創った先人たちは天才だと実感できると思います。
太極拳の套路の覚え方
太極拳の覚え方のコツは諦めないで練習することです。
一見むずかしそうな動きも、一式では無く一動作、または手だけの一動作や足だけの一動作などを何度も繰り返して練習すれば、少しずつ身についていきます。
神経コネクションが出来るまでは時間がかかるので、少しでも每日練習することが必要です。
あせらずに太極拳の練習に取り組んでください。
あまり気が進まないかも知れませんが、自分の動きを動画に残すことをおすすめします。
数週間から数カ月後に動画を確認すると、自分が上手くなって来ている事がわかるでしょう。
成長している事が確認できればモチベーションもあがります。
諦めずに太極拳の練習を続けてください。
太極拳の覚え方のコツは諦めないで練習することです。
簡化太極拳の套路
簡化太極拳は日本の全国各地に教室があるので、始めたばかりの人やこれから始める人は套路の名称が気になると思います。
初めに学ぶ簡化24式太極拳の套路の拳譜と、次に学ぶ32式太極剣の套路の剣譜を以下に紹介しますので、確認してください。
動きの名称より、套路の動作より、正しく立って体をゆるませることが大事です。
焦らずに一つずつ動きを覚えていって下さい。
簡化24式太極拳の套路
1.起勢 | きせい | qǐ shì |
2.左右野馬分鬃 | さゆうやばぶんそう | zuǒ yòu yě mǎ fēn zōng |
3.白鶴亮翅 | はっかくりょうし | bái hè liàng chì |
4.左右摟膝拗歩 | さゆうろうしつようほ | zuǒ yòu lǒu xī ǎo bù |
5.手揮琵琶 | てきびわ | shǒu huī pí pá |
6.左右倒巻肱 | さゆうとうかんこう | zuǒ yòu dào juàn gōng |
7.左攬雀尾 | さらんじゃくび | zuǒ lǎn què wěi |
8.右攬雀尾 | ゆうらんじゃくび | yòu lǎn què wěi |
9.単鞭 | たんべん | dān biān |
10.雲手 | うんしゅ | yún shǒu |
11.単鞭 | たんべん | dān biān |
12.高探馬 | こうたんば | gāo tàn mǎ |
13.右蹬脚 | ゆうとうきゃく | yòu dēn jiǎo |
14.双峰貫耳 | そうほうかんじ | shuāng fēng guàn ěr |
15.転身左蹬脚 | てんしんさとうきゃく | zhuǎn shēn zuǒ dēn jiǎo |
16.左下勢独立 | さかせいどくりつ | zuǒ xià shì dú lì |
17.右下勢独立 | ゆうかせいどくりつ | yòu xià shì dú lì |
18.左右穿梭 | さゆうせんさ | zuǒ yòu chuān suō |
19.海底針 | かいていしん | hǎi dǐ zhēn |
20.閃通臂 | せんつうひ | shǎn tōng bì |
21.転身搬攔捶 | てんしんはんらんすい | zhuǎn shēn bān lán chuí |
22.如封似閉 | にょふうじへい | rú fēng shì bì |
23.十字手 | じゅうじしゅ | shí zì shǒu |
24.収勢 | しゅうせい | shōu shì |
以上が簡化24式太極拳の套路の拳譜です。
32式太極剣の套路
予備式 | よびしき | yǔ bèi shì |
起勢 | きせい | qǐ shì |
1.並歩点剣 | へいほてんけん | bìng bù diǎn jiàn |
2.独立反刺 | どくりつはんし | dú lì fǎn cì |
3. 仆歩横掃 | ぼくほおうそう | pú bù hèng sǎo |
4.向右平帯 | こうゆうへいたい | xiàng yòu píng dài |
5.向左平帯 | こうさへいたい | xiàng zuǒ píng dài |
6.独立掄劈 | どくりつりんへき | dú lì lūn pī |
7.退歩回抽 | たいほかいちゅう | tuì bù huí chōu |
8.独立上刺 | どくりつじょうし | dú lì shàng cì |
9.虚歩下截 | きょほかさい | xū bù xià jié |
10.左弓歩刺 | さきゅうほし | zuǒ gōng bù cì |
11.転身斜帯 | てんしんしゃたい | zhuǎn shēn xié dài |
12.縮身斜帯 | しゅくしんしゃたい | suō shēn xié dài |
13.提膝捧剣 | ていしつほうけん | tí xī pěng jiàn |
14.跳歩平刺 | ちょうほへいし | tiào bù píng cì |
15.左虚歩撩 | さきょほりょう | zuǒ xū bù liāo |
16.右弓歩撩 | うきゅうほりょう | yòu gōng bù liāo |
17.転身回抽 | てんしんかいちゅう | zhuǎn shēn huí chōu |
18.並歩平刺 | へいほへいし | bìng bù píng cì |
19.左弓歩攔 | さきゅうほらん | zuǒ gōng bù lán |
20.右弓歩攔 | うきゅうほらん | yòu gōng bù lán |
21.左弓歩攔 | さきゅうほらん | zuǒ gōng bù lán |
22.進歩反刺 | しんぽはんし | jìn bù fǎn cì |
23.反身回劈 | はんしんかいへき | fǎn shēn huí pī |
24.虚歩点剣 | きょほてんけん | xū bù diǎn jiàn |
25.独立平托 | どくりつへいたく | dú lì píng tuō |
26.弓歩挂劈 | きゅうほけいへき | gōng bù guà pī |
27.虚歩掄劈 | きょほりんへき | xū bù lūn pī |
28.撤歩反撃 | てつほはんげき | chè bù fǎn jī |
29.進歩平刺 | しんぽへいし | jìn bù píng cì |
30.丁歩回抽 | ちょうほかいちゅう | dīng bù huí chōu |
31.旋転平抹 | せんていへいまつ | xuán zhuǎn píng mā |
32.弓歩直刺 | きゅうほちょくし | gōng bù zhí cì |
収勢 | しゅうせい | shōu shì |
以上が32式太極剣の套路の剣譜です。
陳式太極拳の套路
陳式太極拳には流派や門派によって様々な套路があります。
陳式太極拳の一般的な套路は、80式前後の一路拳と二路拳です。
正式に入門して本格的に修業を始める時は、套路以外にも様々な動作を覚えなくてはいけません。
時間がかかりますし、早く健康効果や美容効果を求める人には不向きです。
そこで、私の教室では体力に応じて簡単な基礎動作を練習した後に、習得しやすくした初級8式陳式太極拳を練習してもらっています。
初級陳式太極拳は8式から12式、24式とステップアップして行けるように作りました。
初級のあとには中級、上級とステップアップも可能です。
陳式太極拳を使って日本の健康をまもっていけたら良いと思っています。
日本の健康のために陳式太極拳を伝えられる指導者も育てていければ幸いです。
陳式太極拳には流派や門派によって様々な套路があります。
太極拳の套路の効果
太極拳の套路を練習すると免疫機能が最大限に発揮されて風邪をひきづらくなり、肌が綺麗になります。
私が風邪をほとんどひかなくなったのは、5動作だけの基礎の套路を練習し始めてからです。
それまでも武術の練習はしていましたが、風邪やインフルエンザなどで2~3日寝込むことが年に2~3回ありました。
風邪をもらってしまったのか鼻水が少しでたり、胃腸炎をもらってしまったのか少しお腹がゆるかったりすることは有りますが、太極拳の練習を始めてからは寝込むことが全くなくなっています。
乾燥してカサカサだった肌は、冬でもあまり乾燥しなくなり、肩にたくさん積もっていたフケも出なくなりました。
太極拳の練習を続けていけば、健康効果や美容効果を実感できるでしょう。
太極拳の套路を練習すると免疫機能が最大限に発揮されて風邪をひきづらくなり、肌が綺麗になります。
まとめ:太極拳の套路を覚えて強い体を手にいれよう
太極拳の練習方法の一つに套路(とうろ)練習があります。
空手の型などとおなじように一人で練習するものが套路です。
覚えるには多少の時間が必要ですが、太極拳の套路の練習を続けると健康効果や美容効果が期待できます。
体をゆるませてらせんの動きを意識して太極拳の套路を練習すると、健康効果や美容効果が倍増するでしょう。
太極拳の套路には、武術の立ち方や歩き方の練習と、攻撃や防御の仕方の練習と、動作と呼吸を合わせた気功法の練習などの意味があります。
太極拳の覚え方のコツは諦めないで練習することです。
一見むずかしそうな動きも、一式では無く一動作、または手だけの一動作や足だけの一動作などを何度も繰り返して練習すれば、少しずつ身についていきます。
神経コネクションが出来るまでは時間がかかるので、少しでも每日練習することが必要です。
毎日少しずつ練習して行けば太極拳の套路を覚える事が出来るので、諦めずに練習を続けていきましょう!