太極拳の種類とは?陳式・楊式・呉式などの流派も解説します

太極剣の型を練習する二人の男性

太極拳は体力が無くても気軽に始められそうですよね。

実際、運動の強さは自分で調節出来るので、運動不足の解消や体力の回復などに太極拳は大変おすすめです。

では、太極拳にはどのような種類や流派があるのでしょうか?

分りやすく紹介します。

太極拳の種類【五大流派を解説します】

1.陳式太極拳
2.楊式太極拳
3.呉式太極拳
4.武式太極拳
5.孫式太極拳

太極拳の五大流派は上記の通りです。

これらは伝統拳と呼ばれており、武術的な強さと身体的な強さを両方得る事が出来ると言われています。

ここからそれぞれの流派について詳しく解説していきます。

陳式太極拳

陳式太極拳は全ての太極拳の源流です。

河南省(かなんしょう)の陳家溝(ちんかこう)という村の陳一族に伝承されてきた武術で、陳氏太極拳または陳家太極拳と言います。

近年、制定拳(主に体操用または競技用の型)ができてから陳式太極拳とも呼ばれるようになりました。

1650年ごろ、武将だった陳王廷(ちんおうてい)が、日本と中国の武術や、気功や医術も取り入れて、現在のような陳式太極拳に発展させたそうです。

陳式太極拳は柔らかく緩やかな動作だけでなく、激しい動作を表現する事もあります。

さらに纏絲(てんし)と言うらせん状にひねる動作を使うなど、他の太極拳には見られないような技術が特徴です。

ヨガなどと同じように、捻る動作はとても血行が良くなるので、簡単な動作でも体が温まるのを感じられるでしょう。

楊式太極拳

楊式太極拳は楊露禅(ようろぜん)が1830年ごろに陳長興(ちんちょうこう)から陳式太極拳を学び、その後に改良して創始した太極拳です。

その当時に陳一族以外の者が陳式太極拳を学ぶ事は、非常にめずらしい事でした。

楊露禅は北京で多くの弟子に太極拳を教えていて、運動不足の王族や貴族にも指導していました。

そのため激しい動きは封じて、大きなゆったりとした動きへと太極拳を改良したと言われています。

その後に楊露禅の子や孫も改良を加え、現在普及しているのは孫の楊澄甫(ようちょうほ)が開発した太極拳です。

楊式太極拳は動作がのびのびとして柔らかく、一見して激しい動作を行わない点が陳式太極拳との大きな違いとなっています。

都会の北京で広く普及した楊式太極拳は、近代に国が定めた制定拳の元になりました。

呉式太極拳

呉式太極拳は呉鑑泉(ごかんせん)が楊式太極拳を基に創始した太極拳です。

呉鑑泉は楊式太極拳を学び、楊露禅の孫の楊澄甫と一緒に太極拳を指導していた時期もあります。

弓歩(きゅうほ=立ち方の一つ)の際に前傾姿勢をとることが他の流派と異なり、軽く機敏で円滑な動作が特徴です。

呉鑑泉は上海で呉式太極拳を指導したので、中国国内だけでなく香港を中心として華僑の間にも普及しています。

武式太極拳

武式太極拳は武禹襄(ぶ うじょう)が陳式太極拳に独自の理論を加えて創始した太極拳です。

楊式太極拳を学んだ後、陳青萍(ちんせいへい)から陳式太極拳を学び、『太極拳譜』などで理論の研究をして、独自の工夫を加えました。

比較的小さくて柔らかい印象ですが、理論に基づいた精巧な動作が特徴です。

初めのうちは親族にしか教えなかったので、伝承者は少ないと言われています。

孫式太極拳

孫式太極拳は形意拳と八卦掌の達人だった孫禄堂(そんろくどう)が武式太極拳を学んで創始した太極拳です。

腰が高く歩幅が狭い立ち方で、軽快かつ機敏な歩法を使います。

形意拳(けいいけん)の歩法、八卦掌(はっけしょう)の身法、武式太極拳の手法が統合された動作が特徴です。

孫禄堂の娘、孫剣雲(そんけんうん)が1980年ごろに日本の訪中学習団を指導し、また、来日して講習会を開催するなど、日本との繋がりが深い太極拳となっています。

その站椿功(たんとうこう=一定の姿勢で立つ練習)を教えて頂きましたが、体が温まるのが早いように感じました。

伝統拳と制定拳の違い

伝統拳は古来より受け継がれている身を護る武術で、制定拳は中国政府が伝統拳を基に作った競技用または体操用の型です。

伝統拳は素手と武器を合わせると数百の動作と各種の推手(すいしゅ=二人一組での練習)を鍛練し、正式な弟子にするには拝師式(はいししき=儀式を経て武術上の親子になる)を行うなど、現代でも武術色を強く残しています。

元々の太極拳は村を盗賊などから護るための武術なので、身内以外には教えませんでした。

先師の方々の努力で、最近では私達も伝統拳に入門出来るチャンスが増えました。

また、初心者や一般向けへ少ない動作にした型や推手を、教室やサークルで指導している場所も増えているので、気軽に伝統拳を学べるようになって来ています。

制定拳は、1956年に中国国家体育運動委員会が一般に普及させるための簡化24式太極拳を制定した所から始まります。

当時の名人達人の先生方が、効果はそのままで動作を簡単にして、楊式太極拳を基に簡化24式太極拳を作りました。

1957年には楊式太極拳を基に88式太極拳、1958年には楊式太極剣を基に32式太極剣、1979年には楊式を基に陳・呉・孫式を取り入れて48式が制定され、その後42式総合太極拳や42式総合太極剣なども制定されています。

他にも、8式・16式・32式などが制定され、陳氏38式・陳氏56式・孫氏73式など、五大流派からも制定拳が作られました。

伝統拳は村を守り健康を維持して幸せな人生を全うするために行う、民間に伝わる護身の武術です。

制定拳は中国政府が伝統拳を基に体操用または競技用の型として作りました。

太極拳の流派による違いとは?

太極拳は流派によって、動作の見た目にそれぞれ特徴があります。

五大流派については解説しましたが、動作の特徴をおさらいします。

陳式太極拳は柔らかく緩やかな動作だけでなく、激しい動作を表現する場合もあり、らせん状にひねるような動作が特徴です。

楊式太極拳は動作がのびのびとして柔らかく、大きなゆったりとした動きが特徴でした。

呉式太極拳は軽く機敏で円滑な動作で、弓歩の際に前傾姿勢をとるのが特徴となっています。

武式太極拳は小さくて柔らかく理論に基づいた精巧な動作が特徴です。

孫式太極拳は腰が高く歩幅が狭い立ち方で、機敏な歩法を使うのが特徴となっています。

五大流派の後から、和式太極拳、鄭子太極拳、正宗太極拳なども伝統拳に加わりました。

それぞれの流派の中に各門派があり、同じ門派でも指導者によって練習内容や技術の深さなどが違っているので、武術の世界では一人一流派とも言われる事があります。

また、簡化24式太極拳でも、指導する各団体による特徴が有ります。

日本武術太極拳連盟は主に競技用として、日本健康太極拳協会は主に健康体操として太極拳を指導しているようです。

以上のように様々な流派が有りますが、基本原則に変わりは有りません。

太極拳の各流派では、内側から湧き出す力を使えるように、全身を連動させて体の隅々まで血流が良くなるような練習をしていきます。

太極拳は流派によって、動作の特徴にそれぞれ違いがあります。

太極拳の種類に関するQ&A

  • 初心者におすすめの太極拳流派は?
  • 太極拳をしている有名人は?
  • 太極拳の24式とは?

太極拳の種類に関する良くある疑問は上記の通りです。

ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。

初心者におすすめの太極拳流派は?

初心者コースの陳式太極拳教室の様子

見学などをして、自分に合うと感じた流派や団体がおすすめです。

ですが、強いて流派をおすすめするとしたら伝統拳の陳式太極拳になります。

陳式太極拳は求める効果が一番得られやすいと思います。

他流を修めてから陳式太極拳に移る人も多くいます。

なので、最初から陳式太極拳を練習し始めた方が良いでしょう。

近くに伝統拳を学べる場所が無く、気に入ったオンライン教室も無い場合は、最寄りの教室やサークルで簡化24式太極拳を学んでも良いと思います。

簡化24式太極拳は健康効果等をしっかり考えて作られていますし、全国に無数に教室やサークルが有るので、比較的学び始め易いでしょう。

また、簡化24式太極拳にらせん状にひねる動作を加えるように意識すると、効果が倍増するのを感じられると思います。

ただ、結局は楽しく続けられるかどうかが重要ですので、可能ならば幾つかの教室を見学したり体験したりして、自分に合うグループを見つけるようにして下さい。

合わないと思ったら止めた方が良いです。

太極拳の目的は幸せな人生を全うする事なので、心地よいと感じる環境を見つける事が何よりも大切でしょう。

太極拳をしている有名人は?

太極拳をしている有名人には北京陳氏太極拳協会の会員でもある李連傑(リーリンチェイ=ジェット・リー)がいます。

李連傑は多くの中国武術を修めていますが、陳式太極拳も修めています。

世界的に有名な映画俳優なので知らない人の方が少ないでしょう。

日本の俳優では、高野志穂が2002年に番組の企画で中国の河南省温県陳家溝を訪れて陳式太極拳を陳小星から学んでいます。

https://dizm.mbs.jp/program/ururun/episode/254

また、水野美紀は2011年に番組の企画で陳家溝を訪れて陳式太極拳を陳正雷から学びました。

太極拳の24式とは?

式は1つの動作を表すので、24式とは24動作と言う意味です。

1つの動作には多くの技が含まれているので、24式に含まれる技の数は100以上です。

簡化24式太極拳では1動作目から24動作目までで1つの套路(とうろ=型)となり、その24動作の名称を示したものを「拳譜(けんぷ)」と言います。

簡化24式太極拳以外にも24式太極拳はたくさん存在します。

24動作ぐらいが短すぎず長すぎず丁度よい長さの套路として、各流派などで作り出され、初級から中級者向けとして指導されているようです。

また、世界的に広まった24と言う数にあやかろうとしている所も有り、明らかに24動作以上有るにも拘わらず24式と言っている套路が存在しますが、気にしないでください。

24式は、24の動作が有る事を示しています。

まとめ:太極拳の種類や流派には様々なものがあります

太極拳は運動の強さを自分で調節出来るので、運動不足の解消や体力の回復などに大変おすすめです。

太極拳には陳式、楊式・呉式・武式・孫式と言う五大流派などの伝統拳と、近年になって国家が制定した制定拳が有りますが、それら全ての太極拳の源流が陳式太極拳です。

日本には制定拳の簡化24式太極拳を主に指導する団体が多数存在し、太極拳のすそ野を広げ、練習生の健康維持に役立っています。

太極拳の練習を続けていけば武術的な強さも、身体的な強さも得る事が出来ると言われていますが、両方の強さを獲得しやすいのは伝統拳です。

特に纏絲(てんし)と言うらせん状にひねる動作を操る陳式太極拳が最も効果が高いでしょう。

ただ、簡化24式太極拳に纏絲の意識を加えるとかなり高い効果が得られると思います。

体力に応じて強度を調整して練習できるので、運動を習慣づけるきっかけに太極拳はいかがでしょうか?