太極拳を実戦で使うには? 用法やゆっくり練習する理由も紹介します
太極拳は空手のように力強く動く動くのではなく、ゆっくりと柔らかく動く様子を見かけると思います。
公園などで高齢者が、主に健康目的で太極拳をしている場合が多いでしょう。
太極拳で本当に戦えるのでしょうか?
太極拳を武術として戦闘法として実際に使うにはどうすれば良いのか、どのような練習をすれば良いのか、などを紹介します。
目次
太極拳を実戦で使うには?
下記の動画が実際の太極拳の試合の様子です。
中国武術では練習でも試合でも、顔面は絶対に触りません。
万が一触ってしまったら全力で謝りましょう。
試合などで多く使う「気」は気配などを感じ取って相手の次の行動を予測して、最適の対処法を選ぶ「勘」です。
「勘」は五感を研ぎ澄ませてわずかな変化を感じ取り、蓄積された経験から最善の方法を選ぶ「第六感」とも呼べるでしょう。
実際に戦う時はどのような戦い方をするのか、実戦や試合の考え方などを解説します。
太極拳での実戦
太極拳は主に武器を持った集団どうしの戦いを想定して作られています。
太極拳が生まれたのは中国の黄河に近い陳家溝(ちんかこう)と言う村です。
陳家溝村は川に近い土地なので農作物が良く育ちます。
そのため、盗賊に襲われることもあり、また、村どうしでの争いも有ったので、武術が生まれて発展して来ました。
村や家族や自分の体を護るために、太極拳で戦う時には当然、素早く動きます。
武器や武器になる農具などを持った集団どうしでの戦いでは、次々に敵を倒さなければいけません。
太極拳の武器術には、複数の相手を警戒する型や、次々と違う相手に攻撃する型や、足元の相手にとどめを刺すような型などが有ります。
太極拳では素手の時にも、相手を転ばせてとどめを刺したら直ぐに次の相手に攻撃することを前提としているので、寝技のような戦い方は発達しなかったようです。
太極拳で関節技を使う時にも、崩したり倒したりしたら直ぐに打撃を入れるように設計されているので、相手を地面に抑えつけるような事はあまりしません。
太極拳では、主に集団で武器を持って戦う事を想定して技が作られています。
格闘技での実戦
格闘技では、素手でリングの上などで戦う場合と、武器を持って戦場で白兵戦を戦う場合などが想定されます。
リングなどで戦う場合は、各団体のルールで行われ、大まかに打撃・組み技・総合の3系統に分類されるでしょう。
打撃系統は、主にパンチやキックや肘打ちや膝蹴りを用いる競技で、ボクシング・キックボクシング・ムエタイ・空手・テコンドー・カポエラなどがあります。
組み技系統は、組み合って投げ技などを用いる競技で、柔道・相撲・レスリング・サンボ・ブラジリアン柔術などが当てはまるでしょう。
総合系統は、打撃も投げ技も関節技も絞め技も用いる競技で、MMA・修斗・ヨーロピアン柔術・日本拳法などがあります。
武器を持って戦場で白兵戦を戦う場合は、現代では市街戦になる事が多いでしょう。
現場での格闘にルールは無いのですが、国際法で一定の制限が設けられています。
各国に軍隊格闘術などが有り、自衛隊格闘術・銃剣術・クラヴマガ・システマ・コマンドサンボ・エスクリマなどが有名です。
格闘技には、素手でリングの上などで戦う場合と、武器を持って戦場で白兵戦を戦う場合が有ります。
太極拳の試合
太極拳の試合には、型を採点する競技と、自由な攻防をする各種競技が有ります。
太極拳には套路(とうろ)と言う多くの型が有りますが、競技ルールに従って型を審判に採点してもらって優劣をつけるのが、太極拳の型の試合です。
太極拳の型の試合では、競技時間や動作内容などに細かい基準が決められていて、減点方式で審査するのが一般的となっています。
太極拳の型の試合は、各団体によって日本各地で行われていて、大きな団体では全日本大会も行われ、世界大会もあるようです。
太極拳の自由な攻防をする競技は、散打(さんだ)や散推手(さんすいしゅ)になるでしょう。
散打は散手(さんしゅ)とも呼ばれ、主に打撃系の自由な攻防をする競技で、投げ技が認められる場合も有ります。
散打の大会は各団体が様々なルールで競技を行っていて、一番大きな大会は国際大会です。
散推手の大会は打撃の無い相撲のような競技が多く、足場が固定されている場合や小さな土俵のような所で競技を行う場合など、各団体の様々なルールで行われています。
太極拳の試合は、套路(とうろ)と言う型を採点する競技と、自由な攻防をする散推手などの競技です。
太極拳は強いのか?
太極拳を正しく学んで練習を続けて行けば強くなれます。
体力の強さや武術としての強さなど、人によって太極拳に求める強さが違うとは思いますが、正しく練習を重ねて行けばその両方を得られると習いました。
中高年から太極拳を始める場合は、体力や運動経験などを踏まえて、徐々に運動の強さを上げて行くようにした方がよいでしょう。
太極拳の練習を初めから無理にがんばり過ぎると、膝や腰などを壊してしまう場合が有りますので注意してください。
腰や膝に負担をかけ過ぎないように、太極拳では正しい姿勢を身につけて行くように練習します。
正しい姿勢で徐々に腰を低く下げられるようにして行けば、体力が増して風邪などを引きにくくなるのを感じられるでしょう。
10代20代で太極拳を始める場合は、中国拳法の基礎から始めて、最初に長拳(ちょうけん)に分類される拳法を練習して腕や足腰を鍛える事をお勧めします。
長拳とは手足を大きく伸ばすような型を行う拳法の総称です。
ミットやサンドバッグなどを叩いて突きや蹴りの感覚を養い、徐々に自由な攻撃や防御をするスパーリングのような練習もして行くと良いでしょう。
武器術は棍術などの長い武器から始める事をお勧めします。
武器対武器の攻撃や防御の練習も、怪我をしないように注意しながら少しずつ練習して行きましょう。
大きく真っ直ぐな動きを身につけた後に太極拳の練習を始めると、動作の意味が体感しやすくなるでしょう。
太極拳を正しく学んで練習を続ければ強くなれます。
武術として太極拳を使うには?
太極拳を武術として使うには、型の練習だけでなく、対人練習をする必要があります。
太極拳の套路(とうろ=型)をする時には、まるで相手が居るかのように動かなければいけないと言われますが、相手との対人練習をしていなければ、その感覚はわからないでしょう。
型の一つの動作には少なくとも五つ以上の用法が有るので、それらを相手と交互に練習しておく必要があります。
また、用法の左右や応用などを入れると一つの動作に数十の技が含まれることもあり、その核となる部分を身につける練習もしなければなりません。
技の核となる部分を習得する練習方法が推手(すいしゅ)です。
初めは決まった型の推手練習をして行きますが、段階的に用法を加えて練習して行き、さらに自由に攻撃や防御をする部分を増やして行き、技術の上達をめざします。
攻撃や防御の強さを少なくして自由度を増す場合と、自由度を少なくして攻撃や防御の強さを増す場合などで調整して、安全性を確保しながら推手の練習をすると良いでしょう。
武器を使う場合も同じような練習が必要です。
武器の場合は安全のために、より相手との信頼関係が必要になるでしょう。
太極拳を武術として使うには、型の練習だけでなく、対人練習をする必要が有ります。
護身術としての太極拳
太極拳は村を護るための武術として発展して来ました。
中国王朝の明や清が滅びるような時には、反乱軍が各地の村々を襲うような事もあったそうです。
反乱軍に負けずに陳一族が生き延びた事が、武術として、護身術として太極拳が優れている証拠になるでしょう。
今の時代に太極拳を護身術として使うには、身を護るように意識しながら武術としての対人練習を行い、危険を察知できるように日常でも意識して、護身の能力を育てる必要があるでしょう。
身を護るためには、出来るだけ危険な所には近づかない事も肝心です。
万が一不意の暴力に遭っても、自分も相手も出来るだけ怪我をしないように工夫しなければなりません。
なぜなら、近年の殺人事件の8割以上と傷害事件の7割以上が、親族や顔見知りからの犯行だと発表されているからです。
事件後の更なる暴力などによる被害や、社会的な不利益などを受けないようにしなければなりません。
思いがけない突然の暴力からは太極拳の技を使って逃げ、助けを求めて通報してもらう方が現実的でしょう。
ですがもしも、逃げる事が出来ない状況で命の危険を感じた時には、生き延びる為に出来る限りの事をしてください。
太極拳は村を護るための武術として発展して来ました。
太極拳の実際の戦闘での用法は?
太極拳で戦う時には、主に8つの基本技を使います。
簡単に言うと
の8つです。
パンチもキックも体当てに含まれており、多くの技も8つの基本技を応用して変化したものとなっています。
型の一動作に含まれる用法には、相手からの攻撃を受ける場合と自分から仕掛ける場合の打撃や関節技や投げ技などが有り、それらを応用すると無数の用法を生み出せるでしょう。
沢山の用法が想定されますが、8つの基本技を変化させたものとなっています。
武器を使う場合も同じく8つの基本技を使用するので、素手で戦う場合と違う理屈で動くわけではありません。
太極拳では複数対複数、または一人対複数を想定しています。
戦術としては、こちらが一人で相手が複数でも、出来るだけ1対1に近い形で対処できるような位置取りを目指して行くと良いでしょう。
複数対複数の場合は、こちらが複数で相手が一人になるように誘導する事が重要です。
太極拳で戦う時には、主に8つの基本技を使います。
太極拳をゆっくり練習する理由とは?
太極拳をゆっくりした動きで練習する理由は、ゆっくり動いた方が早く上達するからです。
太極拳を使って戦う時には、相手に合わせて速くも動くし、ゆっくりも動きます。
速く正確に動くためには、正しい動作が身についていないといけません。
太極拳の動作を正しく正確に身につけるには、しっかりと神経伝達の連携を作る必要があるでしょう。
神経伝達の連携がしっかり作られるまでには、動作の難しさなどにもよりますが、少なくとも数週間から数カ月の時間がかかります。
どのような運動やスポーツでも、動作を正しく正確に身につけるためには同じ動きを何度も練習しなければなりません。
動作を速く適当にたくさんやっても、あまり身につかない事は簡単に想像できるでしょう。
型が崩れないように、ゆっくり確認しながら練習すると、手を抜くことが出来ません。
また、力みの無いようにゆっくり練習する事で、とても血流が良くなる事を感じます。
血流が良くなり、気の流れが良くなると神経コネクションが構築されるのがいつもより早いように感じられるでしょう。
太極拳をゆっくりした動きで練習する理由は、ゆっくり動いた方が早く上達するからです。
太極拳の実戦に関するQ&A
太極拳に興味を持った人も、他の拳法などが気になる人もいると思います。
太極拳の実戦に関する上記のような疑問があるのでは無いでしょうか?
ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。
太極拳の実戦を教えてくれる教室はあるの?
太極拳の実戦を教えてくれる教室は、多くはないですが日本の全国各地に存在します。
実戦と言っても、人によってイメージするものや求めるものが違っているでしょう。
指導する教室によっても、指導者によっても実戦に対する考え方や指導する内容は違っています。
自分に合うかどうかは実際に体験してみないと分かりません。
積極的に色々な教室などに参加してみて下さい。
実戦的な太極拳を見つけるヒントは、本物志向の中国拳法の先生方は流派によらず仲が良い事が多いと言うことです。
太極拳の実戦を教えてくれる教室は、多くはないですが日本の全国各地に草の根的に存在します。
太極拳と空手の違いとは?
太極拳は円を描くような動作が特徴で、空手は直線的な動作が特徴です。
太極拳は北派に分類され、空手は南派に分類される拳法が基になっています。
中国の北の方で生まれた太極拳は、1972年の中国と日本の国交樹立の後に日本に広く紹介され、一般的に知られるようになりました。
空手は、中国の南の方で行われていた拳法が沖縄の武術に取り入れられて、沖縄で独自に発展し、大正時代に日本全国に広く知られるようになったようです。
太極拳は円を描くような動作が特徴で、空手は直線的な動作が特徴となっています。
一番強い拳法は?
その時そのルールで一番強い人と言うのは存在するでしょうが、拳法自体に強さの優劣はありません。
そもそも中国拳法では一つの流派だけを修める人は少ないでしょう。
基礎として長拳(ちょうけん)を練習して、受け身を習得するために地功拳(ちこうけん)や酔拳(すいけん)を練習して、接近戦が得意な拳法と遠距離攻撃が得意な拳法を合わせて練習するなど、多くの拳法を修めている人の方が多いです。
もちろん、太極拳は優れた拳法ですが、八卦掌(はっけしょう)や形意拳(けいいけん)や蟷螂拳(とうろうけん)や詠春拳(えいしゅんけん)など他の拳法も素晴らしい拳法なので、習得すれば強くなれるでしょう。
拳法自体に強さの優劣はありません。
まとめ:太極拳を実戦で使うには練習が必要です
太極拳を武術として使うには、型の練習だけでなく、対人練習をする必要が有ります。
太極拳の套路(とうろ=型)をする時には、まるで相手が居るかのように動かなければいけないと言われており、相手との対人練習をしなければその感覚は習得できません。
太極拳では型の練習の他に、技の対人練習や推手の練習をする事で実用性を身につけて行きます。
推手は初めに決まった型の練習をして、段階的に技を加えて行き、さらに自由に攻撃や防御をする部分を増やして行って技術の上達をめざすと良いでしょう。
武器の練習でも同じように対人練習をすると、実用性を身につける事が出来ます。
正しく学んで太極拳の練習を続ければ強くなることが出来るでしょう。
太極拳をゆっくりした動きで練習する理由は、ゆっくり動いた方が早く上達するからです。
太極拳で速く正確に動くためには正しい動作を身につける必要があり、そのためには神経伝達の連携を作らなければなりません。
神経伝達の連携がしっかり作られるまでには、少なくとも数週間から数カ月の時間がかかります。
型が崩れないように、手抜きせずにゆっくり確認しながら、力みの無いように練習する事で、とても血流が良くなると感じられます。
血流が良くなり気の流れが良くなると、神経コネクションの構築が早くなり、動作の上達が早まるでしょう。
太極拳を武術として使うには、型の練習だけでなく、対人練習をする必要が有ります。