陳式太極拳の基本功を初心者向けに解説!練習方法を紹介します

太極拳の型をする男性

陳式太極拳はすべての太極拳の源流であり、体と心を強くする中国の伝統的な優れた技術として世界中に広く知られています。

陳式太極拳の基本功(きほんこう=基本練習)は、ゆっくりで柔らかいらせんの動きとそれに合わせる呼吸を練習して、内側から湧き出る力を使えるようにして行く構成です。

陳式太極拳の基本功の簡単な説明の次に、種類や基本姿勢を詳細に写真なども使って説明します。

陳式太極拳の歩法や動作は動画で確認して行きましょう。

「功」は練習の事で、「功夫(=クンフーorゴンフ―)」は正しい練習の蓄積による熟練度と言う意味があります。

また、中国武術を表す「カンフー」はクンフー(kungfu)を英語で発音したもので、武術に詳しく無い英語圏の人たちは日本の空手も柔道も剣道も「カンフー」と呼ぶ場合もあるので注意が必要です。

この記事では初心者向けに陳式太極拳の基本功を紹介して行きますので、ぜひ体感してみてください。

陳式太極拳の基本功とは?

陳式太極拳の基本功(きほんこう=基本練習)は、正しい姿勢でらせんの動きに呼吸を合わせて、内側から湧き出る力を使えるようにして行く練習です。

中国武術の基本練習で正しい姿勢が出来るようになれば、身体の構造的な強さが養われて、解放できる力も強くなっていくでしょう。

また、基本練習をすれば柔軟性があがって血流が良くなり、怪我や病気を予防する事が期待できます。

そして、基本練習を通して体の中から湧き出すエネルギーを効率的に伝えられるようになれば、そのエネルギーが体の中を通る感覚を実感できるでしょう。

陳式太極拳の基本練習では、正しい姿勢を意識しながら、ゆっくりとしたらせんの動きに呼吸を合わせます。

深い呼吸を意識しながら動作を行い、内部エネルギーを伝えやすくするために力まないように余分な力を抜いて、力の流れを意識して練習して行くと良いでしょう。

力の伝え方は、相手と軽くミットなどを打ち合って技法を確認してみてください。

ミットはスポーツ用品の通販サイトなどに、パンチミットやキックミットなどの商品名で何ページにもわたって表示されると思います。

1万円以上のプロ格闘家用のものではなく、数千円のミットで十分でしょう。

打ち方の技法の詳細はDVDや下の動画などで確認してください。

陳式太極拳の基本功(きほんこう=基本練習)は、正しい姿勢でらせんの動きに呼吸を合わせて、内側から湧き出る力を使えるようにして行く練習です。

陳式太極拳の種類

陳式太極拳には大きく分けて、大架式(たいかしき)、小架式(しょうかしき)、老架式(ろうかしき)、新架式(しんかしき)、と呼ばれる型があります。

陳式太極拳にはその他にも種類があり、同じ種類でも門派や老師(ろうし=先生)によって型が違って見えるでしょう。

なぜなら、先生に似ている者は大成しないと言われているからです。

先生の動きを真似して陳式太極拳を習得したあとは、自分の体格や考え方などに合わせて改良し続けなければならない事になっています。

大架式(たいかしき)

1800年ごろに陳長興(ちんちょうこう)が整理した套路(とうろ=型)です。

後に出来た陳有本(ちんゆうほん)・有恒(ゆうこう)兄弟が制定したものが小架式(しょうかしき)と呼ばれるようになったため、大架式と呼ばれるようになりました。

1900年ごろに陳発科(ちんはっか)が北京で教えたのも大架式です。

小架式(しょうかしき)

陳有本(ちんゆうほん)・有恒(ゆうこう)兄弟が制定した型です。

始めは新架式(しんかしき)と呼ばれていましたが、1900年ごろに陳発科が北京で教えたものが新架式と呼ばれるようになったので、小架式と言うように変化しました。

老架式(ろうかしき)

1800年ごろに陳長興(ちんちょうこう)が整理した型のことです。

1900年ごろに陳発科(ちんはっか)が北京で教えたものが新架式と呼ばれるようになったため、同じ大架式で陳長興が整理した型を老架式と呼ぶようになりました。

新架式(しんかしき)

1900年ごろに陳発科(ちんはっか)が北京で教えた型です。

都会で他の武術の影響を受けて变化した型で、大架式の新架式になります。

陳発科の型を新架式と呼ぶようになったため、それまで新架式と呼ばれていた陳有本の型を小架式と呼ぶように変化しました。

1900年以前に陳有本の型が新架式のまま台湾に伝わったため、台湾で新架式と言えば陳有本の型のことです。

その他の陳式太極拳

その他の陳式太極拳の型には、陳有本から学んだ陳清萍(ちんせいへい)の趙堡架式(ちょうほかしき)と、趙堡架式を学んだ李景炎(りけいえん)の忽雷架式(こつらいかしき)があります。

趙堡架式も忽雷架式も、ベースは小架式なので、力の伝え方などが小架式と同じように見えるでしょう。

制定拳(せいていけん)で競技用の陳式太極拳56式は2000年ごろに作られました。

陳式太極拳の基本姿勢

陳式太極拳の基本姿勢では、脊柱を真っ直ぐに立て、力みを抜いてリラックスして立ちます。

写真で表示したように、正しく立つ事で体のバランスが良くなり、安定性が上がって、簡単には押し倒され無いようになるでしょう。

力みを抜いてリラックスすると、筋肉の緊張がほぐれて血流が良くなり、相手に素早く対応出来るようになります。

陳式太極拳の基本姿勢には、乱扎衣(らんざつい)や単鞭(たんべん)などがあり、私も立ち方の指導をたくさん受けました。

人を右側から見ると胸椎と腰椎は緩やかなS字になっていて、頸椎と仙骨の反りも含めて生理的湾曲(せいりてきわんきょく)と言います。

生理的湾曲を示した後頭骨脊柱仙骨尾てい骨を横から見た写真

陳式太極拳の基本姿勢の練習は、この生理的湾曲を消して脊柱がまっすぐになるように意識する練習です。

生理的湾曲を出来るだけ無くして真っ直ぐになった後頭骨脊柱仙骨尾てい骨の写真

腰椎・仙骨・尾てい骨が地面の奥底に向かって、胸椎・頸椎・後頭骨が宇宙のかなたに向かって引っ張られているイメージで立ちます。

重心は土踏まずの踵側に置くようすると良いでしょう。

全部の関節をフリーにしますが、特に膝と股関節を緩めて下さい。

陳式太極拳の基本姿勢では、脊柱を真っ直ぐに立て、力みを抜いてリラックスして立ちます。

陳式太極拳の基本歩法練習

陳式太極拳の基本歩法には、前後の進歩(しんぽ)退歩(たいほ)と、左右の左顧(さこ)右眄(うべん)が有ります。

基本歩法の練習の目的は、足の使い方と重心の移動を学んで行くことによって、陳式太極拳の歩法の基礎を作る事です。

正しい歩法を身につけることで安定して移動できるようになり、上半身と下半身の調和が向上し、柔軟で円滑に動けて、力を無駄なく伝えられるようになります。

陳式太極拳の基本歩法は纏絲(てんし)に合わせて行う事が多く、型の一部を切り取った動きです。

進歩(しんぽ)は両手で大纏絲(だいてんし)をしながら前に移動します。

退歩(たいほ)は後ろに引き込む纏絲をしながら下がる動作です。

左顧右眄(さこうべん)では雲手(うんしゅ)をしながら左右に移動します。

陳式太極拳の基本歩法には、前後の進歩退歩と、左右の左顧右眄が有ります。

陳式太極拳基本功の具体的な動作4つ

陳式太極拳の基本動作を4つご紹介します。

起勢(きせい)は動作のスタートで、地面から丹田(たんでん=下腹部)へ力が伝わって手に現れる状態です。

纏絲(てんし)は陳式太極拳の全ての動作に含まれ、大小の螺旋状に力を伝えます。

雲手(うんしゅ)は両手で交互に大纏絲を行う動作です。

全身を連動させて纏絲を行うことが出来ると、纏絲勁(てんしけい)がスムーズに発生するようになります。

起勢(きせい)

全身を緩めて地面から下腹部に伝わってくる力を指先まで導きます。

呼吸に合わせてゆっくり動作すると、血流がとても良くなるのを感じるでしょう。

纏絲(てんし)

正面で片手の大纏絲です。

全身を連動させて掌で円を描くような動作をします。

丹田(たんでん=下腹部)からの力を指先まで伝えるように意識すると、指先の血流が良くなるのを感じられるでしょう。

雲手(うんしゅ)

交互に大纏絲を行う動作です。

正しい姿勢で呼吸に合わせてゆっくり動作すると、温かい温泉の中で泳いでいるように心地よくなってくるでしょう。

纏絲勁(てんしけい)

蹴りに対して、大纏絲の動作で化勁(かけい=力の方向を変化させる)を行う纏絲勁の例になります。

相手の力の方向を変化させて、そのまま相手に返すような技です。

陳式太極拳の基本功を行う上でのポイント

陳式太極拳の基本功を行う上で大切なポイントをご紹介します。

まずは力まないようにして、動作に意識を集中する事が重要です。

そして、深くゆっくりとした呼吸を通じて身体の隅々までエネルギーを送り込むようにイメージします。

また、正しい姿勢で体のバランス感覚を養うことも必要です。

全身を連動させるためには正しい姿勢で動作をしなければなりません。

以上のポイントを心掛けることで、陳式太極拳の基本功をより深く理解し、身体全体で体現できるようになって行きます。

身体の力を抜く

陳式太極拳の基本功では、放松(ほうしょう=身体の余分な力を抜くこと)が必須となります。

なぜなら、放松すると血流がとても良くなりますし、陳式太極拳ではゆるんだ身体で力を伝える技術が求められるからです。

例えば、起勢(きせい)の動作を考えてみましょう。

指先まで力を伝えるには、体に無理な力を入れずに全身の関節をフリーにして立つことが重要です。

無駄な力を抜き、身体をゆるませることで、血流が良くなって神経伝達がスムーズになり、力が伝わりやすくなります。

また、雲手(うんしゅ)でも同様に、身体がゆるんだ状態で全身を連動させて動くことで、内部から湧き出すような力を最大限に伝えることができるでしょう。

力を抜くことが難しければ、呼吸を深く遅くし、その呼吸に合わせてさらにゆっくり動くことを意識してみてください。

また、立ったまま温泉に浸かっていて全身がゆるんで行く、かのようにイメージしても良いでしょう。

陳式太極拳の基本功では、放松(ほうしょう=身体の余分な力を抜くこと)が必須となります。

動作と呼吸を合わせる

陳式太極拳の基本功を行う上では、動作と呼吸を合わせることが大切です。

ゆるんだ身体で全身を連動させてゆっくり動き、さらに呼吸を合わせると、かなり血流が良くなります。

たくさん練習して動作と呼吸が合って来ると、血流が良くなって行く様子を感じられるようになるでしょう。

動作と呼吸が合っていれば、神経伝達がなおいっそう向上して力の伝わりやすさがもっと良くなります。

手を上げる時に息を吸って、手を下げる時に息を吐くのが基本です。

また、動作が始まる前に吸って、動作している時に吐くと言うのも基本になります。

吸気は短く呼気は長く意識して、自然に動作と合わせて行けるようにして下さい。

陳式太極拳の基本功を行う上では、動作と呼吸を合わせることが大切です。

常に正しい姿勢を意識する

陳式太極拳の基本功において、常に正しい姿勢を保つことが重要です。

正しい姿勢は血流を良くして神経伝達を最適化し、力の伝わりやすさを向上させます。

起勢(きせい)のときは足を肩幅に開いて、脊柱を真っ直ぐにして、関節を緩めて、重心を土踏まずの踵側に置いてください。

左右どちらかの足に体重を乗せる時は、足幅中央三分の一の範囲内に重心を留めます。

移動する時は片足に体重が乗りますが、脊柱を真っ直ぐにして関節を緩めたままです。

血流を良くして神経伝達を最適化し、力の伝わりやすさを向上させるので、陳式太極拳の基本功において、常に正しい姿勢を保つことが重要となります。

まとめ:陳式太極拳の基本功を実践してみましょう

陳式太極拳の基本功(きほんこう=基本練習)は、脊柱を真っ直ぐにした姿勢でらせんの動きに呼吸を合わせて、内側から湧き出る力を使えるようにして行く練習です。

余分な力を抜いて基本練習をすれば、柔軟性があがって血流が良くなり、怪我や病気を予防する事が期待できます。

呼吸や動作に集中していると、雑念が徐々に無くなって行き、日ごろのストレスも和らぐでしょう。

たくさん練習して力を解放出来るようになると、ストレス解消に重宝します。

運動不足の解消や、怪我や病気からの体力回復にも、ぜひ活用してください!